CMの撮影は思ったよりも難しい。
ユイの顔もやや疲れている。
「ちょっと休憩するか」
「「はい...」」
「ユイ、外でよ」
「うん」
ユイの手を引いて外に出る。
「疲れてる?」
「ちょっとね。思ったより大変」
溜息をつく。
日本一でも...はじめて初めてで...。
初めから完璧にできるやつなんていなくて。
まだまだだなって...感じた。
「ユイ」
「ん...っ」
ユイの小さな唇にキスを落とす。
真っ赤に染まったユイの顔。
「エネルギー補充」
俺の笑顔につられてユイも笑顔になる。
「今日記念日だよ」
「知ってるよ」
「え?!知ってたの?」
「当たり前だろ」
驚くユイの頭を軽くたたいた。
俺が記念日を覚えてないひどい男だと思ってたのか...。
軽く心の中でショックを受けた俺。
「そろそろもどろっか」
「うん。あたしトイレ行ってからいく」
「わかった。んじゃな」
このとき俺がユイの異変に気づいていれば...。
一緒にトイレに行っていれば。
君の運命を変えることはできたのだろうか。
いや...違う。
“運命は生まれたときからずっと決まってて、かえることはできないんだよ”
君がそう言って笑ってたから。
君は絶対嘘はつかないから。
“だから涼に出会ったのも涼の幼なじみになったのも恋人になったのも運命なの。生まれる前からずっと決まってたの。”
あの日そう言ってキスを交わした。
もうあの日は戻らない。

