「リオちゃんここをね...」
モニターを見ながら眉をしかめる監督。
監督の言いたいことはわかる。
ただリオはまだまだ新人。
俺でも新人の値に入るぐらいだからな...
「はぁ...」
監督の言いたい事がいまいちよくわかっていない。





この監督の求めるものを言葉にするのは難しい。
「リオこっち来て」
つまり俺がさせなきゃいけない。
酒井さんが言ってたのはこういうこと。
「ここをこうして...俺を見て」
「こ...ぅ?」
「そうそう...んで、目線をこっちに...んで手をこっちに...」
「そうそう!!リオのその表情!」
監督がうれしそうに声を上げる。






もくもくとシャッターを切るカメラマン。
指示を出す監督。
俺を見つめるリオ...。
これは仕事...何度自分に言い聞かせても頭をよぎるのはあの事件。
「涼...どうした?」
「いえ、なんもないっす...すいません」
酒井さんが気を使って休憩を入れてくれた。






「はぁ...」
「涼、大丈夫?」
心配そに俺の顔を覗き込むリオ。
「休憩時間まで近寄んな。俺関わりたくーねから」
「ごめん...」
あせって離れていくリオ。
優衣...今どうしようもなく君に会いたい。






「涼、もういけるか?」
「はい、大丈夫っす!」
立ち上がらなきゃいけない。
優衣のために...。
前に進まなきゃいけない。
自分のために。