あの後に、私と聖二君は少しだけ話をした。

「そういえば、鈴木さんの好きな人って、黒崎?」

「えっ!?な、何でそんな事を…!?」

あれ、違う、と聖二君は首を傾げた。

「俺、妹がいてさ。黒崎の妹と友達なんだ。それで最近、黒崎が家でずっと鈴木さんの話しかしないんだって」

たぶん、いや、今の私の顔は真っ赤になっているだろう…。

そんな私をさておき、聖二君は話を続ける。

「だからさ、二人とも付き合ってるんだと思って」

「つ、付き合ってはいないよ。でも…」

「黒崎君と初めて会ったのは、最近なの…。それまで、全然知らなくて…。でもね、最初は怖かったけど以外に優しくて、妹さん想いのお兄ちゃんで、」




―――黒崎君といると、すごく、楽しい――――





気づいた。今さら気づいた。

私、



「黒崎君の、こと、」

「鈴木さん」

聖二君を見ると、それ本人に言ってあげれば、と私に携帯を見せた。

そこには知らない番号が映っていた。

(黒崎君の番号………)


「これ、見せてあげるから電話しな?俺の携帯から繋いだら、あいつ変な誤解しちゃうかもしれないし」

笑って聖二君は私に携帯を渡して、私は間違えないように一つずつ丁寧に番号を打っていった。


―――プルルル


―――ガチャッ


『……もしもし…』

「あ、あの、く、黒崎君!!すっ鈴木です!!」

『…………………え?』

(あれ、もしかして間違えた?)

「あのー…」

『ほ、本当に鈴木なのか!!』

「う、うん。鈴木だよ!!」

『何で番号っ……』

「えっと、それは~…」

チラッと聖二君を見ると、聖二君は人差し指を口にあてて、しぃー、とジェスチャーする。

「ゆ、祐子から聞いたの~…」

あぁ、あいつか、と黒崎君は納得した。

「あの、黒崎君…」

『会いたい』

私の言葉を遮って黒崎君は言った。

『今から会いたい』