「あ、星が出てる…」

黒崎君と並んで歩いていた私がふと上を向くと、夜空に沢山の星が輝いていた。

黒崎君もすぐに上を見上げて、久しぶりに見たな、と懐かしむ。


「ねぇ、黒崎君はどれが一番星かわかる?」

黒崎君は、あー…、と軽く唸ってから

「わかんねぇな。一番星って一番光ってる星のことをいうのか?だとしたらどれが一番星かなんて、人それぞれだよな」

うん。そうだ。と一人で自問自答している黒崎君。

「ふふっ」

突然笑ったことに、黒崎君は私を見つめた。

「ごめんなさい。黒崎君の考えが、私の考えと全く一緒だったから」

少し声を出して笑うと、黒崎君もそうだったのか、と言って軽く笑った。


その後も、給食に出てきた牛乳瓶の蓋が取りにくかったことや月の中に、兎がいると信じていたことなど、私たちはくだらない話をしては盛り上がった。


家にもあっという間に到着し、私は黒崎君の方へ振り返った。

「送ってくれてありがとう。すごく楽しかった」

「俺も、すごく楽しかった。」

これでやっと、安心して帰れるよ、と黒崎君は腕を上げて、背伸びした。


「それじゃ、おやすみ」

「おやすみなさい」


黒崎君が帰り、その背中が見えなくなるまで見送った後、私は温かい光が満ちている部屋へ足を向けた。