小さく首を縦に振った。
「ごめんな」
彼の手がさらに優しく私の頭を撫でる。
「でも…!!」
「?」
「今は…恐くない…」
大丈夫、と小さく呟いた。
「それなら良かった」
彼は軽く口角を上げて、煙草を吸ったまま夜空を見上げた。
「鈴木は変わんねーな」
彼がポツリと呟いて、あれ、と思った。
「あの、黒崎さんは何であたしの名前、知ってるんですか…?」
この人に名乗った覚えはない。
「は?いや、わかんねーの?俺の名前知ってるのに」
「あー…実は、黒崎って名前自体、今日初めて聞いたんですけど…」
言った瞬間、彼の煙草がポロッと手から落ちた。
ドラマのワンシーンみたいだ。
「……………まじかよ…」
彼は煙草を落とした体制のまま言った。
そして
「…高校一緒だったんだけど」
「誰が…」
「俺」
「誰と…」
「………お前と」
「嘘でしょ?」
「残念ながら」
知らないはずがない。
だってこんなある意味目立つのに、高校の三年間気づかなかったなんて、あるはずがない。
「えー…と、名前を」
「黒崎京介」
すいません。わからないです。
「覚えてねーか。学校なんて殆どサボってたし」
気にすんなよ、と続けた。
「それに、」
「?」
「お前、上田聖二のことしか見てなかったしな」

