「皆様お疲れ様でした、一日目はいかがでしたか?楽しかったですか?それはよかったですね」
バスガイドの重永さんがにっこりと笑う。
溜息が出る程綺麗な人だと改めて思う。

「さて、次は皆様お待ちかねのホテルでございます、オーシャン高塚リゾートホテルは今から110年前にありました、老舗の高塚旅館を1年前にリニューアル致しまして、豪華なホテルとなっております。ホテルには露天風呂から、プールもありますので、楽しめるとよいですね。ホテルまで30分程山道を走っていきますので、その間皆さんでカラオケでもしたいと思いますが、いかがでしょうか?」

賛成よ!大賛成!と真っ先に大声を張り上げたのは、ナベ先生だ。
生徒たちはやっぱり来たかとげんなりしたが、ナベ先生じゃ仕方がない。

ナベ先生がいそいそとマイクを握ると、松田せいこの青いスイトピーをリクエストして、もうそりゃくねくねと踊りながら大熱唱して…男子からの顰蹙を買ったのだった。

鳥居先生はゲラゲラ笑い、おもしろがってアンコールまでしだすものだからこの30分間、ナベ先生の独壇場、いや、ナベコンサートになってしまったのである。

気を良くしたナベ先生はまた明日も歌うわよ〜と張り切ってしまったので、生徒たちが辞めてくれ〜とブーイングしていたのにも関わらず、私空気読めないから〜とバッサリ切り捨ててしまった。


そんなナベ先生が好きな私は、「よっ、さすが世界のアイドルナベ!そうこなくっちゃ」などと鳥居先生と一緒になって煽るもんだから、他の生徒たちから私にまで冷たい視線を送られてしまった。


そうこうしてるうちにホテルに到着して、バスから降りると、そこまで大きいホテルではないのだが、プライベートホテルさながらに、高級感が漂うお洒落なホテルで、目の前に広がるガーデニングされた色とりどりの花たちが私達を出迎えてくれたのだ。

修学旅行に泊まるのには相応しくない程に高そうなホテルを見た生徒たちは大歓声をあげ、一目散にホテルへ向かって走っていく。