歩は『何も見てない!!!』と自分に念じ、振り返り、帰ろうとした。 「し、失礼しました」 するとその人が、 「待って!!!!」 と歩の腕をガシッと掴み、涙目をした。 「……え?あの」 なんで涙目なわけ?! こっちが泣きそうなんですけど?! と歩は思った。 「行かないで?治療していって!!頼むから!!」 「……は?」 歩は突然言われた一言が意味不明で、すっとんきょうな声が出た。 その人はまるで子犬をように目をウルウルさせている。 歩は見捨てることができなかった。