シートベルトを外し、ドアに手をかける日和。




「あれさ」



「……?」




「あの運命ドラマの歌詞、お前が15の時に賞取った作品に感じが似てたな」




「えっ…そ、そうか?」




「花…」


「ああ…」



頷きながら頭をかく日和。




「あの時も花が出てくる詩だった…」



「だな」



「タイトル、ちゃんと考えておけよ」


律壱はいつもの笑顔に戻って、日和のおでこを指でピンっとはねた。




「痛てぇな…分かってるよ」


そう言って車を下りる日和も、いつもの日和に戻っていた。



「じゃ、また」



走り去る律壱の車。



日和は深く深呼吸した。






「バカもん。排気ガス吸い込むと身体に悪いぞ」



背後から人の声。



「お疲れだな、ひよりん」



「善さん」



手にゴミ袋を持った善さんが車と車の間から出てくる。



「…掃除?」


「ああ、最近ガムの吐き捨てやタバコの吸い殻が多くてな」



「そっか…、ロビーの掲示板に張り紙でもした方がいいかもね」

日和は善さんの服に付いたホコリを優しく払いながら言った。