君の詩が色褪せても

井関さんの貫禄に何故かビビる2人。

挨拶する余裕もなかった。



恐る恐るパンフを手に取る律壱。


「女性誌なんですね」



「ええ、働く女性向けなのよ」



「僕らは音楽コーナーですか?」




「勿論。あのヒットドラマの主題歌についても聞きたいわ」


不気味さを漂わせニコりと微笑む井関さん。



律壱は目の前の折りじわだらけの紙に目を落とした。


隣の日和は全く興味を示さず、話もろくに聞いていないようで、記者を前に堂々とあくびをしていた。





「でも、働く女性を癒すのは音楽だけじゃダメなのよね」




「……?」



急に髪を撫で、色っぽい声を出してくる井関記者。


しかし、見てる側は暑苦しく、正直キモいだけだった。









「あなたたちには、この創刊号の表紙を飾って欲しいの」






真っ赤な口元が再び微笑する。










「帰る」


日和が立ち上がった。




「…日和」

戸惑う律壱。





「オレは顔出しの仕事は一切しませんから」



サングラスの奥の目が記者を睨んだ。




「いつまでソレを通すつもり」

井関さんは低い声で返した。