君の詩が色褪せても

半分呆れながら、律壱は折り畳まれた紙を開いた。



「後でディスク渡す」


日和はクリームソーダをストローでちゅ〜っとすする。



そんな可愛らしい日和の仕草を気にしながら、律壱は運命曲の歌詞に目を通していった。




「抽象的すぎるかな?」



「待て、まだ途中」



「タイトルも未定なんだよなぁ」




律壱は食い入るように並ぶ活字を眺める。








「いいじゃん」

律壱の口から零れる一言。



「マジ?」

律壱に顔を近付けて歌詞を確認する日和。



「ぉ…おぉ」

思わず律壱の声が裏返る。


日和は微動だにせず、ずっと歌詞を確認している。



ちっ…近い…―

嬉しいけど…―


ヤバい……―




抱き締めたくなる!―




「お待たせしました」


ぽっちゃりした記者の女性が2人に頭を下げた。


救われた律壱。

何も気付いていない日和。


2人も会釈する。



「はじめまして、私新しく創刊される週間シグナル担当の井関と申します」


見たとこ30代後半かと思えるその記者は、椅子に座ると机いっぱいに特集記事や雑誌の概要などが書かれたパンフを並べた。