『日和』


愛里子がその名前を書く。



「日和のこと覚えてるって不思議だよな」




「…運命、感じたんだ」



そう言いながら、愛里子はつらつらと記憶の中のモノを整理していった。



新しい変化はない。



「なんか、ささいなことでも感じたことでいいんだぞ」



「感じたこと?」



「空気とか匂いとか雰囲気みたいなこと」



愛里子は顔を上げると玄関の方を見た。



「どうした?」




「あの人…弥生さん…」



「弥生さんがどうかしたの?」





「どこかで会った気がする……」


呟くように零れた言葉。




「弥生さんに?」

顔を渋くする日和。




「…お母さんみたいな感じだった…」




「お母さんって、弥生さんはまだ25だよ。愛里子ちゃんみたいな大きな子供は……」



「そう感じたんなら書いとけよ」


「うん…」



母親か…―






「雰囲気的なものなのかな?」

伸びをして息を吐き出す律壱。




「今度、確認してみるよ」


日和は風で揺れるカーテンをどこか遠くを眺めるように見ていた。





聞いたことがある