律壱の作った運命曲だけが響き渡る。

日和は、それがとても心苦しかった。





流れるようにマンションの駐車場へ入っていく車。


草木の手入れをしている善さんがサイドミラーに映り、日和は我に返った。


「…もう、着いたんだ」


「道、空いてたからな。寝呆けてるのか?」


器用に切り返しなしで車を駐車させる律壱。



「あの…っ」

日和が運転席を見ると、そこには律壱の姿がなくなっていた。


……?


「早く下りろよ。鍵閉めるぞ」


「えっ?うち寄ってくの?」

慌ててシートベルトを外し、飛び出す日和。



ガチャ…



車にロックがかかる。



「愛里子だよ」



「愛里子……?」

再び呆然とする日和。



「何だよ…、今朝の話は妄想か?」



愛里子…―



しまった…
スッカリ忘れてた…―



「もしかして、忘れてた?」


律壱の痛いツッコミに日和はブンブンと頭を振った。


「つーか…、律壱こそ良く覚えてたな」


「だって妖精見てみたいもん」


「証拠ないぞ」


2人はエレベーターに飛び乗った。


「だから証拠探しだよ」

律壱は指を立てる。