また、このパターンか…―
「オレらのファンなんだ。有り難いな」
優しい律壱の言葉に安心して照れ笑いする弥生。
「…珍しくもないよ。オレのファンだからって、仕事依頼してくる人、今まで結構いたし」
「日和!」
「仕事なのに、そんな私的な感情挟むなんて、どうかと思うけど」
日和は不機嫌な表情を作り、ハッキリと告げた。
「ぁ……」
弥生は言葉を失い、悲しげというより、惨めさを感じた顔で下を向いた。
ファンです!なんて…
それを言う理由は何だ…
何が目的なんだよ…―
「日和!…これは仕事だぞ、私的な感情挟んでるのはお前だろ」
律壱の声は日和に届いてはいなかった。
もう、まっぴらだ…―
誰もオレの詩なんてまともに聴いてないくせに…―
「これ、オレの携帯番号。仕事なら、顔見なくたって出来るだろ…」
「えっ…?」
日和は名刺を机の上に置いて、不機嫌なまま、その場を立ち去った。
「おい!日和!」
律壱が後を追い掛ける。
バタンと閉まるドアの音に弥生は震え上がった。
「日和!」
廊下で日和の肩を掴む律壱。
「お前、いい加減にしろよ。職場放棄だぞ」

