「日和くんの詩集…『君の詩が色褪せても』、読んだんだ」
ドキッとする日和。
「タイトル、パクられた」
笑いながら言う弥生。
「…ごめんなさい」
「そんなことはどうでもいいの。…あの詩集の中に少し懐かしい詩を見つけた」
「…IRIS?」
「うん」
愛里子と約束した詩…ー
「アイリスに似てたけど、…もっと奥深くて、涙が出るほど素敵な詩」
「……ありがとう…」
「その詩を読んで、また漫画を描いてみたんだ」
「…それって…」
「妖精の愛里子が作詞家の男の子に恋する話」
恋する…話…ー
「妖精は人間を好きになってはいけない。…だけど、愛里子は諦めずに探すの、恋心を失った人間を…そして、その少女の中で永遠に生き続けるの。大好きな彼をひたすら想い続けながら……」
「…そっか…」
日和は再び弥生の顔に視線を移す。
「愛里子は…弥生さんの所に帰ったんだな」
横顔の弥生の頬はポゥっとピンク色に染まった。
そして頷く弥生。
「…ありがとう日和くん」
やっと伝えられた言葉だった。

