「えっ……まぁ…」
戸惑う日和。
「彼は素敵な作詞家です。初めて彼の詩を読んで、すぐにファンになりました」
「……」
口ごもる日和。
「そして、彼の詩に勇気をもらって初めて漫画を投稿しました」
昔、聞いたことのある懐かしい話。
「彼の詩を元に、漫画を描いたんです」
ハキハキと喋る弥生。
「…でも、その漫画の内容がどんなものだったのか、私は忘れてしまったんです」
日和の胸がズキッと痛む。
「原稿を探しました。でも、見つかりませんでした」
『君の詩が色褪せても』…
見つかるわけがないー
「それは…オレが…」
「なくしたのは、それだけではありませんでした。…3年前の数日間の記憶を失っていたんです」
下を向く日和。
「…そして、漫画を描く気力も…」
弥生は海から空に視線を移した。
「でも、ある晩夢を見たんです」
ゆっくり顔を上げる日和。
「夢?」
「私は植杉さんと、そのお仕事仲間の服部さんと、あることについて話してるんです」
あること…ー
「愛里子」
弥生の口から優しくはっせられた名前。

