『書けないよっ…だから、そこは濁らせてみたんだ』
『悲恋か…』
遠くを見つめる日和。
『編集者さんにも言われちゃった。少女マンガでバッドエンディングはNGだって…』
『…そーなのか……』
『愛里子にはいっぱい想いを託したんだけどね』
『想い?』
『私の恋する気持ちの一生分を愛里子に捧げて書いたんだ』
『……』
『植杉さんに恋してる自分の恋心を愛里子に託したの』
『へっ…?』
『おかしいでしょ。みんなにバカにされるんだけど、私、植杉日和さんに恋してるんだ』
少女は恥ずかしそうに微笑んだ。
『……』
赤面する日和。
『会ったこともない人なのに、あの詩を読んで…恋に落ちたの…。嘘じゃないよ、本気』
だから…ー
頑張ってプロを目指した…ー
そして…
やっと出会えた…ー
だけど…ー
見つからないの…
一生分の恋心が…ー
いつの間にかあがっていた雨。
「あれ?弥生さん?」
日和のマンションの前で偶然鉢合わせる律壱と弥生。

