『主人公は妖精なの。名前は愛する里の子って書いて愛里子』


『愛里子?』


『アイリスを真似てみたの……』


『あぁ』


『愛里子はスゴく可愛い妖精なの…ヒラヒラの服を着て、イリスみたいに背中に翼があるの』


『虹の女神イリスか…』



『ギリシャ神話知ってるの?』


『えっ?…あぁ少し…』



『本当にいい子なの。素直で明るくて…私の憧れの、なりたい自分をそのまま愛里子にしてみたの』


『なりたい自分か…』




『愛里子は人間に恋をするの。作詞家の素敵な男の子に…植杉さんをイメージしたんだけど』


ドキッとする日和。


『2人は仲良くなるんだ…そして作詞家の男の子も愛里子を好きになるの』


『ハッピーエンドか?』



首を横に振る少女。

『…妖精は人間を好きになることは許されないの。愛里子の…妖精の仕事は、あくまで人間から人間へ恋のメッセージを伝えることだから』


『アイリスの花言葉だな』

『うん。恋のメッセージ、よき便り、使者』



『使者か…』


『愛里子は使者。だから自分自身は恋は出来ない。作詞家の男の子に別れを告げて愛里子は天上の世界に帰るの…。愛里子の涙は地上に零れ落ちて花を咲かす。それを目にした男の子は愛里子のために詩を書くの…アイリスみたいな詩を…』


『書いたの?詩?』