「マンションの中、居なかったのか?」
広いリビングは昨日のままになっていた。
「ああ、善さんも見てないって」
ソファーに広がるゴスロリ服を見つめる弥生。
「いつ頃居なくなったのか分からないのか?」
「雨が降り出したのが明け方だったから、多分それ以降だと思うけど」
「愛里子ちゃん、傘持って出かけたの?」
「うん。気付いたら弥生さんがくれた傘が無くなってたから…」
考え込む日和。
「明け方とは言い切れないよ」
服を手にして弥生が呟く。
「何で?」
「ロリータにとっては、傘もお洒落アイテムのひとつなの。あの傘は雨天兼用だし、原宿辺りなら日傘をさしてる娘は沢山いるもの」
「原宿か…」
頭をかく日和。
「愛里子ちゃんが行きそうな場所、知らないのか?」
律壱が日和の肩に手を置く。
「行きそうな場所?」
「外出記録」
「愛里子が外に出たのは…この間のファミレスと…近所のスーパーと…弥生さんに連れてってもらった原宿…」
「だけか?」

