「律壱くんも…みんな…も」
愛里子も日和の顔から、流れるように視線を海に移す。
「きっと、愛里子にもあると思う」
「過去の傷?」
「…だから、記憶がなかなか戻らないのかな〜なんて思ったりする時もある」
穏やかな海に話しかけると、優しい答えが波と共に返ってくるような気分になる日和。
「過去に傷があっても、振り返らないで、真っ直ぐ生きてる人も沢山いる」
「……」
「だけど、オレも律壱も過去の傷が開いたり閉じたりを繰り返すだけで…なかなか自然に前に進めないんだ……」
「日和…」
優しく日和の肩に触れる愛里子。
「お前が記憶取り戻すの、少し怖いよ」
「何で?」
「本当のお前が知っているオレは、オレの嫌いな過去のオレかもしれないから」
日和はいつになくシリアスな表情で、瞬きもせずに海を見つめていた。
「愛里子も…怖いよ」
膝を抱える愛里子。
「どして?」
「日和のそばに居たいから」
「それって告白?」
日和は愛里子の顔を見ることなくさらっと聞いた。

