息を荒くして、いつものように寝転がる日和。
「ヤベっ…焼ける」
日和は忘れていたサングラスを外した。
日和から遅れること約5分、愛里子がヨタヨタとやって来た。
「んもぅ、日和早すぎるよ…」
「お前が遅いんだよ。200メートル位だろ」
「疲れた…」
愛里子は日和の横にちょこんと座る。
「妖精だろ?飛べないの?」
「飛べるのかもしれないけど、飛び方覚えてないもん……」
すねるように話す愛里子。
「過去の記憶がないのって辛い?」
「…辛いというより…淋しい…」
「そっか」
日和は反動を付けて起き上がった。
「オレは、過去の記憶なんかいらない」
「……?」
「…なんて言ったら、やっぱ逃げになんのかな」
「何の話?」
日和の少しシュンとした顔を覗き込む愛里子。
「オレ、過去に嫌な思いしたことがあって、今だにそれ引きずってんだ」
「嫌な思い?」
「オレだけじゃない…、律壱も…、きっと誰にだって過去の傷って奴があると思うんだ」
日和はいつもより柔らかい口調で、海に向かって話していた。

