過去作品集○中編


胸が痛いなんて、変だよ。
吉見に好きな人がいたから?
私には関係ないのに?

ア然としたっていうか、呆然したっていうか……
一瞬、頭の中が空っぽになった……




『夏乃? 寝ないの?』

消灯時間を過ぎてもテレビを見ていた私に、千里が声をかける。

『うん……寝る……』

『夏乃、変だよ? 吉見と何かあった?』

本当のところ、千里は吉見をどう思ってるのかな。
恋愛感情はないって言ってたけど。

もし本当は好きだとしたら、
さっきの事は、言わない方がいいのかな……

『一人で悩んでないで言っちゃいなよ! 友達でしょ?』

グルグルと色んな事を考えていた私に優しく微笑みが向けられる。

『うん、実は……』

こんな恋愛相談みたいなの可笑しい。
まるで、私が吉見の事を好きみたいだ。




『そっかぁ。 抱きしめられて、お守りを……かぁ』

上手くまとめて話せなかった話を千里が簡潔に繰り返す。

『ねぇ、お守りって一つしか貰ってないの?』

『え? 一つだけど』

私が答えると、千里は先ほど受け取ったばかりのお守りを見つめた。

『でも一つっておかしいよね? 普通、縁結びのお守りって二つセットじゃん』

『セット?』

吉見の持ってたお守りも、一つだった。
それも、私と色違いの。

まさか、それって……

『ねぇ、夏乃。 もう一つは吉見が持ってるんじゃないかって思うんだけど』

千里も同じ事を考えていた。

私の受け取ったお守りは、吉見のものとセットなんじゃないかって……

『やっぱ吉見は夏乃が好きなんだと思うなぁ』

『そんな事……』

だとしたら、誠との事も応援しないはず。
まさか吉見が私をなんて、
あるはずないんだよ……