過去作品集○中編


『吉見、その台詞……』

『なんてね。 昔、好きな奴に煙草が苦手って言われたんだ』

はぐらかすように、吉見は私の頭をクシャっと触った。

同じ台詞。
ただの偶然?

『俺、まだ休憩してるから先に皆のとこに戻んなよ』

『う、うん』

吉見に背中を押されるようにして、渋々皆の所へ戻った。



『吉見、無事だった?』

お店に戻ると、皆すでに空の丼を片付けていた。
食べるの早すぎだから!

『ただ煙草が吸いたいだけだったみたい』

『何それ。 吉見なんか待ってなくていいから、早く食べちゃいなよ』

待ちに待った飛騨牛ラーメンを注文して食べ終わっても、吉見は戻ってこなかった。

『天野くん。 吉見はどこに行ったかわかる?』

お店の外で吉見を待っている天野くんに声を掛ける。
ても、天野くんは無言で首を横に振るだけだった。

やっぱりついていけば良かったなぁ……

そのうちに集合時間が来て、私たちは一泊する予定の旅館に戻る事になった。



『吉見!?』

何故か、旅館には一足先に吉見が。

『ごめん、ごめん。 迷子になっちゃってさぁ』

『馬鹿! みんな心配してたんだよ』

『ごめんってば』

ごめんで済むことじゃないよ。
ずっと待ってたのに。

『もう吉見なんて知らない』

そう言って背中を向けた時だった。

『心配かけて本当ごめん』

優しい吉見の声が聞こえたのは。
しかも吉見の腕はしっかりと、私を抱きしめてるし。

『よ、吉見!?』

突然の出来事に動揺を隠せない。

『ごめんね? 迷子になったの嘘。 本当はこれが買いたくて』

吉見がこれと言った物は、見掛けは普通のお守りのようだった。

『縁結びのお守り。 夏乃落ち込んでたから』

こんな物のために?
単独行動すれば、皆から責められるのは吉見なのに。

『ありがと……』

さっきより少し緩んだ吉見の手から、お守りを取り出した。

『吉見も買ったの?』

『うん。 お互い上手くいくといいね!』

吉見はポケットから青い、私と色違いのお守りを出してニコッと笑った。

「お互い上手く」
何だか少し、胸がチクンと痛かった……