過去作品集○中編


『夏乃!!』

公園の入口の方から聞き覚えのある声がする。

『吉見……』

本当に吉見が来てくれるなんて……

ううん。
私は確信してた。
吉見は絶対に来てくれるって。

『馬鹿。 何泣いてるんだよ』

『……え?』

自分でも気が付いてなかった涙に、吉見は苦笑してみせた。

いつから泣いてたんだろう。

誠の前?
それとも吉見の姿を見た時?

もう、どっちでもいいか……

『明日、元通りになれるように今、泣いちゃえよ』

今は何も考えずに泣きたい。
恥ずかしいとか考えもしないで叫びたい。

どれだけ悔しいか、誠にも見せてやりたいよ……






『どう? 落ち着いた?』

私が泣き止んでから、吉見は缶ジュースを差し出した。

『ありがとう』

来る途中に買ったんだろうか。
少し温くなってる。

中身は甘酸っぱいハチミツレモン。

『このジュースの味、吉見みたい』

『俺?』

『優しいんだね、吉見は』

甘い甘い吉見のイメージ。
私は好きだなぁ。



『ってか彼氏とは、どうすんの?』

そう言って、吉見も自分のジュースを空ける。

『わかんないけど、もうちょっと頑張ってみる』

『そっか。 頑張れよ?』

『うん!』

吉見にたくさん励ましてもらったから、今なら頑張れる気がする。
誠の本心に耐えれる気がする。

それが別れに繋がっても、今なら立てると思うんだ。

『明後日、遠足かぁー!』

そう言った吉見の顔は、いつも通りに戻っていた。
だから私もいつも通りに答えるの。

『すごい楽しみだね!』

『うん。 昼は飛騨牛食べような』

『うん!』

明後日の遠足が終われば席替えがある。
それまでは、こうして吉見に甘えてもいいよね……?