過去作品集○中編


『夏乃? どうかした?』

トイレから帰ってきた誠が、ポンと後ろから私の肩を叩く。

何も無かったような顔をして……

『わ……私、友達から呼ばれちゃったから帰るね』

『え? なら、気ぃつけて帰れよ』

どうしよう。
誠を信じなきゃいけないのに。

平気なフリをして「電話鳴ってたよ」って言わなきゃいけないのに。

上手く笑えない。

『ごめん……』

私は、逃げるしか出来なかった。
決定的な事実を突き付けられるのが恐かった。





……千里……
助けてよ!!



『出ない』

千里、電話に出ない。
電車かな。
まだ学校かな。

どうしても、話がしたいのに……





……吉見?
何で私、吉見のメモリ開いてんの?

吉見なら聞いてくれそうだから?
慰めてくれそうだから?

ううん。
誰でもいい。

誰か、話を聞いて……!