過去作品集○中編


日曜日になると、誠が家まで迎えに来てくれた。
少しブカブカのGパンに、黒のジャケット。

久々の私服に思わずドキっとさせられてしまった。

『何食いにいく?』

『うんとー…… 誠は?』

『夏乃の食いたいものなら何でもいいよ』

何か照れちゃうね?
デートなんて、何度もしてたのに。




適当に駅前をブラブラして、行き慣れたファミレスに入る事にした。

やっぱ、いつもの所のが落ち着くからね?

他愛のない話をしながら、ドリンクバーのジュースを飲む。

『えぇー!? 誠って弟いるんだぁ?』

『うん。 弟が一匹』

それは、初耳だった。
あんまり家族の話とか聞いた事なかったから。

『きっと弟さんも誠に似て、格好いいんだよねぇ』

『さぁ? ってか夏乃会ったことあるけどね』

『へ?』

い、いつ会ったっけ?
家に行った時かな?

お母さんには会った事あるんだけど……

『あ! そう言えばもうすぐ遠足だね!』

記憶にないのも失礼だと思って、急いで話題を変える。

『そーいえば、夏乃はどこ行く?』

『えっと、高山だったかな』

『すぐそこやん!』

誠は笑ってそう言った。
確かに近いけど、一応県外なんだからね!

『じゃあ誠は?』

『俺は忘れちゃった』

何それ!
人のことは近所って馬鹿にしておいて。

『つーか班行動とか苦手なんだよねぇ』

眉間にシワを寄せて窓の外を見る誠。

班行動、か。
美恵先輩は?
一緒の班なの?

『夏乃? 暗い顔してどうかした?』

『……美恵先輩、同じ班なの?』

『ははっ、ヤキモチ?』

馬鹿にしたような笑い方してさぁ。
けっこう心配してんだからね?

『 夏乃と付き合ってから、あいつとは話もしてないよ?』

……え?
前に裏庭にいたのは誠じゃなかったの?

『本当に?』

『本当だよ』

そんな。
私が誠を間違えるはずないのに。

でも、

『わかった……』

誠を信じると決めたのは私だ。
そう決めたんだ。