過去作品集○中編


こんな言い訳聞きたくなかったの。

だって……

『つか、亜由美が泣く意味わかんねぇから……』

『だって……』

ほら、涙が止まらなくなるから……

だから聞きたくなかったんだよ。

『同情とか勘弁してよ』

『同情なんかじゃ……』

『じゃあ、「好きだから」とか言っちゃう?』

何でそんな事言うの?
私は、同情なんかしてないよ。

『可哀想とか思ってんだろ!? そう思ったら、もうそんなの愛情じゃねーんだよ』

『そんな……』

『そういう同情みたいなのが、一番要らない』

二度目に言われた「要らない」は、私自身じゃなく、私の気持ち。

達也に笑ってほしい。
達也を幸せにしたい。

その気持ちを否定されてしまった。

『同情なんかじゃ、ないんだよ……』

『もういいって。 ほら、帰るぞ』

さっきまで小さかった歩幅が、少しずつ大きくなる。

小走りじゃなきゃ、追いつけないくらいに……

また達也が遠くなる。

そう思ったら、また涙が止まらなくなった……