過去作品集○中編


『もう! 達也なんか誘わないからね!』

女の子はキッと一睨みし、達也に背を向けて去っていく。

ヤバイ。
私も行かなきゃ。

こんな時に会ったらまた……

そう思った時には遅かった。

『……亜由美』

達也は、こちらに気付いていたのだ。

『もしかしてずっと見てたのかよ』

あの冷たい目が、私に向けられる。
「要らない」と言い放ったあの目が……

『……ッごめん!!』

やっと動くようになった足をばたつかせるようにして、必死に逃げた。

もう、謝るしか出来なかった。

あの目をした達也に言い訳する強さなど、最初から持ち合わせていないのだから。

『待てよ!!』

しかし、達也は全速力で追いかけてくる。

『逃げんなよ、ゴラァ!!』

怒りを露(アラワ)にして一直線に走る達也に、ひたすら逃げる私。

でも、男の足に敵うはずがない。

すぐに追いつかれ、抜き去っていったのだ。

ん?
抜いちゃ駄目じゃん?

『おっし、抜いたぁ!!』

達也は私を抜いた事に誇らしげに両手を挙げた。

満面の笑みに、大きなガッツポーズ。

『何よ。 かけっこでもしたかったわけ?』

『あ……そうだった』

『アホくさ……』

呆れる程、ガキくさい。
年上なのに……

でも少し昔の達也に戻った気がして、嬉しかったんだ……