過去作品集○中編


夜の9時頃になって、そろそろお開きになった

『達也、片付けいいから亜由美送ってってやれよ』

食器を運ぶ達也を掴まえ、翔くんが言う。

『俺、飲酒運転だけど』

『え……』

飲酒って……
送ってもらわない方が安心な気がしてきた。




『怖い怖い怖い!』

助手席に座ってがっちりシートベルト。
事故の瞬間は見たくないから目はギュッとつむったまま。

いっそのこと、眠ってしまおうか。
何もわからないまま死にたいし……

『飲酒なんて嘘だよ。 どうせ送れって言われるから飲んでない』

『……本当に?』

『ホント、ホント』

確かに飲んでる所は見てないけど、桜さんがビールを出してた気がする。

間違いなく翔くんは飲んでたけど……

『ってか、私を送ったりしていいの?』

『何で?』

『桜さん、翔くんの所に置いてきてるでしょ? 不安じゃないの?』

ただでさえ、翔くんは桜さんが好きなのに……

『意味がわかんね。 何で俺があいつらの心配……』

『だって、桜さん。 達也の彼女なんでしょ!?』

今ごろ口説かれてるかも知れないし。
もしかしたら襲われてるかも。

『ははっ、確かにヤバイかなぁ。 翔も顔に似合わず鬼畜系とか?』

『でしょ!?』

私なんか送ったために、なんて後悔させたくないよ。

『なーんてね!』

『……へ?』

べーっと舌を出し、悪戯に笑ってみせる達也。

何よ!
人が心配してるのに。

『桜は翔の彼女だよ』

『……はい?』

『この間のネックレスも今ごろ渡してんじゃない?』

一体どういう事?
達也とは何の関係もないの?

『この間は、翔のプレゼント選んでほしいって頼まれたんだよ。 あの姫様に』

何よそれ。
私、ずっと達也の恋人だと思って……

『安心した?』

馬鹿……
安心なんか、するわけないじゃん……