過去作品集○中編


『いい? せーのっだからね!』

各自、クラッカーを持たされ、鳴らすタイミングを指導される。

『せーの! HAPPY BIRTHDAY翔!』

パンと鳴らされるクラッカー。

どうやらパーティーというのは、翔くんのBirthdayパーティーらしい。

だから翔くんの家で集まってるのね。
納得だわ。

『つーか、誕生日って皆こんなことするわけ?』

『そうですよ? やっぱ産まれてきてくれて嬉しいから』

『……ふーん』

桜さんの言葉に、達也の顔が曇る。

『俺、誕生日祝ってもらったことないからさぁ。 わかんねぇや』

そうか。
達也の家は、寂しい家だった。

誕生日どころじゃないような家……

『そうだ!』

桜さんは、バッとチョコペンを取りケーキに何かを書き足した。

【HappyBirthdaySHOU.TATUYA】

少し達也の名前が小さい気もするけど、

『はは、桜最高……』

達也はとても嬉しそうに笑ったんだ。

『翔のついでね!』

『……一言が余計なんだよ』

何てすごい人なんだろう。
達也の表情を一瞬で明るくした。

私には、真似できない……

『ほら、食べましょ!』

私は、達也の事情を知っても何も出来なかった。

ただ、腫れ物を触るみたいにしか……