過去作品集○中編


《ぴんぽーん》

またもやインターホンが鳴る。
今度は一体誰なの?

恐る恐るリビングから顔を出し、玄関を見つめる。

『翔っ、おかえり!』

玄関から入ってきたのは、間違いなく翔くんだ。

『ケーキあるよ!』

桜さんは満面の笑みを見せ、翔くんの首に抱き着いた。

『重いっつの……つか、客来てんじゃないの?』

翔くんは苦笑しながら桜さんを下ろし、リビングへと入ってくる。

『あ……亜由美?』

『何でここに翔くんが?』

それに「おかえり」って……

『それは俺の台詞! ココ俺ん家なんだけど』

『え?』

だって……
じゃあ何で、桜さんや達也が?

それに桜さんも合い鍵を。

『達也の靴もあったけど、達也は?』

『翔の部屋にいるよ』

桜さんはにっこりと微笑み答える。

ってか、さっきから「翔」って呼んでるよね?
達也は「達也さん」なのに。

あーもー……
もう頭ん中ぐちゃぐちゃ……



『おらっ! 勝手に俺の部屋に入んなや』

『いいだろ? 客来てるときくらい!』

何やら奥の部屋から2人の声がして、しばらくすると翔くんが達也を連れてきた。

『達也さん翔帰ってきたよ!』

『もう遅いわ!! もっと早く言え!』

達也と桜さんの会話が漫才みたいで何だか笑えちゃった!

『あは、本当2人って面白い!!』

もう難しいことなんか考えたくなくなっちゃうよ!

『別に… 俺たちの普通の会話だし!』

そう言った達也の顔も少し笑っているように見えた。

久々だな。
達也の笑顔……