過去作品集○中編


『うん、上出来!』

仕上がったばかりのケーキやオードブルを机に並べ、桜さんはガッツポーズ。

こういう所は子供らしいなって、少し安心した。


《ぴんぽーん》

と、調度その時。
玄関のインターホンが鳴って誰かが入ってきた。

『おかえりなさーい、達也さん』

それはやっぱり、達也だった。

『お客さん来てんの? 靴あるけど』

達也はそう言って、私のいるリビングに入ってくる。

『……亜由美』

私を見つけた時の達也の顔。
一瞬で氷ついたように無表情になった。

『桜』

『はい?』

『勝手に客連れてくんな』

達也……
何か怖い……

やっぱり来ちゃいけなかったんだ。

『私のお客さんです』

『桜の家じゃないだろ』

『……翔は、そんな事で怒りません』

桜さんはそう言い切ると、達也の目をジッと見た。

達也の前で翔くんの事なんて、どういうつもりだろう。
きっと達也にとって禁句なのに……

『好きにすれば』

と、達也。
悔しそうな表情を見せ、私に言う。

『俺、奥にいるからアイツ来たら教えて』

私が嫌いでも、桜さんには逆らえないんだろう。
ぶっきらぼうな台詞と共に、奥の部屋へと入っていった……



『ごめんなさい。 達也さんが失礼な事言って……』

しばらくして桜さんが謝った。

『ううん。 勝手な事したのは私だもの』

……ってか、桜さんもなんだけどね……?