過去作品集○中編


『コレください!』

しばらくして、彼女は私にネックレスを出した。

あれ?
2つも……

最初に見に来たネックレスと、さっき達也が気に入ったネックレス。

選べないから2つとも渡すって事かな?

『プレゼント用にお包みしますね』

不思議に思ったけど、突っ込むわけにもいかないので坦々と仕事を熟す。

レジでお金を貰って、ネックレスを包装……

『あの、こっちは包まなくていいです』

1つを包装し終わった時。
彼女はそう言って私を止めた。

『でもこれは……』

達也が気に入ってた方……
プレゼントじゃないの?

『忙しいのに一緒に来てくれたお礼なんです。 すぐ渡したいので、そのままで』

ニッコリと笑って言う彼女に、目を奪われてしまう。

外見も内面も可愛いなんて狡(ズル)い。
こんな子が相手じゃ、絶対に敵わない。

また「要らない」って言われるのがオチだ。


『達也さん、これプレゼント』

『は?』

『今日のお礼です。 好みなんでしょう?』

『好みだけど…… お前、箱くらい入れてもらえよ』

お会計が終わると2人はそんなやり取りをして店を出ていく。

2人とも、凄くお似合い。
誰にも文句言えないくらい美男美女。

『ありがとうございましたぁ!』

最後に精一杯の笑顔で、2人の背中を見送った。

情けない、情けないよ。

こんなに2人の事で頭が一杯になってる。

自分がこんなにも未練がましい女だったなんて、知らなかったよ……