それは、あまりに突然の事だった。

『翔…… 私、デキちゃったみたい』

『……は?』

突然すぎて、マヌケな声を漏らし、ア然とする。

デキた……?
デキたってアレか?

デキないと思ってたわけじゃない。
だって外出しは避妊にならないって、聞いてたし。

ただ、いつも当たり前のように生理が来るから、俺達に限って……って思ってた。


『……ごめん……』

『…うん?』

『俺は子供なんて無理だよ。 父親にはなれない』

「堕胎」
その気持ちは、どうしても変えられない。

誰に何て言われようと……

『金は払うから、ごめん』

俺は机に財布を置いて部屋を後にした。
幸い、昨日は給料日だったし財布の中には8万が入ってる。

それで、どうにかしてくれよ。
俺はまだ父親になれないんだ……





『翔! 子供できたんだって?』

その夜。
どこから聞き付けたのか、親友の達也が訪ねてきた。

『……何が言いてぇんだよ』

からかいに来たのか、それとも説教か。
どっちにしても、今は気分じゃない。

『どうすんの? 産むの?』

『……産まないよ』

『だよなぁ~? お前がパパなんて想像できんわ』

達也が笑う。
俺も少し苦笑してみせる。

子供を堕ろす事に抵抗は無かった。

どうせ、まだ生きてないし。

そんな考えだった。