過去作品集○中編


呆気なく、終わってしまった。
誠との時間が……


『夏乃、大丈夫?』

机に突っ伏し、涙を零す私に近付く人物。
正直、今はこの顔を見たくなかった。

『何で吉見が来んのよ!? 何で何があったのか分かるの!?』

『ごめん…… 彼氏が教室から出てくの見えたから』

吉見は、申し訳なさそうに俯いて言った。

『あんたが来たら泣けない』

『でも、置いて帰れない……』

こんな時にまで優しくしないでよ。
誠に言われた事、事実になっちゃうよ。

私は誠を捨てて、吉見を選んだ。
そんな風になっちゃうよ……






『吉見……? もう大丈夫だから帰ろっか』

空が茜色に染まる頃、ようやく涙を止める事が出来た。

隣の席に座り、ずっと顔を伏せていた吉見に声をかける。

私の泣き顔を見ないようにしてくれたんだろう。
その優しさに、また胸が苦しくなる。

『あんさぁ…… 明日は休みだし、俺と遊んでよ』

『……え?』

『駄目かな?』

吉見と遊ぶ?
そんな事出来ないよ。

誠にあんな事言われたばかりなのに……

『私、吉見を好きになりたくないの。 好きになったら最低な女になっちゃうから』

誠の事、文句言えなくなっちゃう。
言われた事が全部、真実になっちゃうもの。

『好きになっていいよ。 別に悪い事するわけじゃない』

『でも……』

『夏乃がそれで元気になるなら利用してもいいじゃん』

真っ直ぐに私の目を見る吉見に、また涙が滲む。

この優しさにつけこんじゃいけない。
駄目だってわかってるのに……