過去作品集○中編


『遅くなってごめん』

放課後、誰もいなくなった教室に、誠が現れる。

『それで、話って?』

入ってきた時の笑顔が作り笑いだった事。
声がいつもより低い事。

そんな事から、誠の話が良くない事だと察しがついた。

『夏乃、俺に隠してることない?』

『……え?』

隠し事?
私、隠し事なんて……

『クラスの奴から、お前が他の男と抱き合ってたって聞いた』

眉間にシワを寄せ、私を睨むように見る誠に、足がすくんだ。

こんなに本気で怒った姿は初めてだ。
何だか怖い……

『誠……それは……』

それに、抱き合っていた相手に心当たりがあるから、余計に辛い。
吉見から抱きしめてきたけど、抵抗しなかった私も悪いわけで……

『俺からより戻しといて悪いんだけど』

嫌。
嫌だ。
続きを言わないで。

『俺、夏乃と別れたい』

そんな事言わないで……

『いくら俺が浮気したからって、仕返しとか有り得ねーよ』

違う、違うの!
仕返しなんかじゃないの!!

『じゃあ、そいつと仲良くな』

違うのに、
何も言い返せない……