朝の喧嘩が嘘かのように、午後から吉見は穏やかさを取り戻す。
それは、私がよく知る吉見だった。
その日の放課後、私は下駄箱の前で3人の女生徒に呼び止められた。
『あんたが、吉見くんの好きな女?』
女生徒の中心に立つ、化粧濃いめの女が言う。
『ってか、普通にうちのが可愛いんだけど』
なんて、自信たっぷりに言う様子にア然。
自分の事、可愛いって……
どんだけナルシストなんだ!?
『ちょっと男ウケしてるからって、調子乗んないでくんない?』
『……は?』
ってか何なの?
急に現れて勝手な事言って。
吉見が誰を好きになろうが、吉見が選んだんならいーじゃん!
『ってか、兄が駄目なら弟とか…… 図々しいってわかってる?』
……え?
どういう事?
『つーか俺、影でコソコソする女って好きじゃないんだよね』
と突然、背後から聞き慣れた声が……
『吉見……』
いつの間に来たんだろう。
『俺が選んだ女に文句言ってんなよ』
選んだ女……
嫌だ、めちゃくちゃ恥ずかしい。
名前出されたわけじゃないんだけど、もう吉見の気持ち知っちゃってるから余計に……
『何よ、もう!!』
女の子達は反論出来ないのか、パタパタと逃げていった。
『あ……ありがとう』
しばらくして我に返り、とりあえず礼を言う。
『ごめんね、俺のせいで。 怖かっただろ?』
『あはっ、そんな怖くなんて』
怖かった。
めちゃくちゃ怖かったよ。
だって、あんなふうに囲まれた事なんて初めてなんだもん。
『馬鹿…… 泣きそうな顔して笑うなよ』
口ではぶっきらぼうに言ってみせても、私を抱きしめる吉見の腕は、とても優しかった。
そんなに優しくされたら、胸が苦しくなるよ……

