「…珍しい、自分をギセイにするなんて。」
裏庭の金木犀の枝に腰掛ける少女が、隣の紫陽花の傍らに立つ青年に言った。
「…必死だったから、さ。」
「必死って…単に本駄目にして弁償するのが嫌だったんじゃないの…?」
「それでも、必死に本を守ってた。…本当に本が好きなんだね、あの娘。」
くすくすと青年は笑った。
そして―
「…面白いことに、なりそうだよ。蜜季?」
そう、少女に告げた。