時をさかのぼること10分前。
いつものように支度をすませ、学校へ歩んだ。

今日は彼女――有坂桜のメイド姿が見れる日で、うかれた足取りで。

語弊があると悪いから言っておくが、今日は文化祭なのだ。

決して日頃から「桜たんはぁはぁ」なんてメイド服を着せてるわけじゃない。マジで。

まぁそんなわけで、いつもより早く学校へ行った、のだが。


「……これ…は。」


道を間違えたかと思った。いや、間違えてたらよかった。
そしたら、「いっけね、間違えた!テヘッ!」くらいですんだのだ。

…しかし現実はそうもいかないものでして。


「…魔王の…城…。」

魔王の城。
紛れも無く、そう書いてあった。どこにって?看板さ。
学校の前にある、この木で出来た…。

「……WHY?」

なんで学校の前に看板?つかこれ学校か?
学校というには少し――いやかなり邪悪な雰囲気が。

「………。」

ヤバイ、泣きそう。
帰りたい、コレヤバイ帰りたい。

でも学校だよな?これ。
あ、そっか。文化祭の出し物か。
なーんだそうだ。そうであれ。

「……よし。」

自分に言い聞かせ、歩みを進めた。




郁坂樹、17歳。

それが、俺の人生最大の間違えだった。