忙しそうに走り回るたくさんの人たち。


俳優らしき人たちが集まった一角ではメイクの真っ最中。


楽しそうに談笑している役者さんもいれば、台本を手に集中している人もいる。


その独特の雰囲気に、あたしはドキドキしていた。


足が地についていない感じ。


「―――ここにいて」


レジーはそう言うと、台本を手にスタッフと何やら話しているひげを生やした中年の男性の元へ歩いて行った。


何を話しているのかまではわからないけれど、時折こちらをちらちらと見ながら話しているのが気になった。


「優奈!」


レジーに呼ばれ、わたしは子供たちをその場に残し、レジーの傍へ行った。


「このセリフ、ちょっと言ってみて」


と、突然レジーの持っていた台本を見せられる。


「え―――?」


「これ『I am Japanese』ってとこ」


言いながら、レジーはわたしの手を引き、組み立てられたセットの中へと足を踏み入れた。


「ここに立って」


そこは病院の内部のような造りになっていた。


「で、彼が―――」


レジーが後ろを振り返ると、そこにはいつの間にか背の高い黒人男性が立っていた。


「あんたに話しかけるから、そうしたらさっきのセリフを言って」


「あの―――」


「時間がないんだ。一発で頼む」


レジーはそれだけ言うと、わたしの話は聞こうともせず、さっさと行ってしまった。