「それが、そうでもなかったらしい。土地の話は、一度は都に委託するってことで落ち着いたらしいけど、兄弟でもめて、結局4人で分割して所有することになったって。それから遺産は、お祖父ちゃんがかなりため込んでたらしくって、兄弟4人でそれぞれ1億ずつ残されてたって」


「1億!?」


驚いた。


祖父がそんな資産家だったなんて。


母からは『すごいケチなのよ』と聞かされていたけれど―――


「で、その土地なんだけど、結局そのまま寝かしといてもしょうがないってことで母さんは売ることにしたらしくって―――茂子叔母さんはそこに家を建てて住んでるけど、他の2人もやっぱり売ってるんだ。で、その金額が―――2億」


「2億!?土地だけで?」


「成城だからな」


わたしは、呆然と兄の言葉を聞いていた・・・・・。


「その土地を売った時に、母さんは遺言を残してるんだ」


「遺言・・・・・?」


「ああ。弁護士に依頼して―――3億もの遺産だ。当然必要だと思ったんだろう。まじめな母さんらしいよ」


「うん・・・本当に」


「弁護士からの連絡が今頃になったのは、土地が現金化されたのがつい先週のことだったからだって。で―――これ」


そう言って兄がわたしの前に置いたのは、白い封筒だった。