素直で不器用な彼に、こんな演技が出来るとも思えず、
しかし大人とは私に想像もつかないくらい、平気で不義を犯し、いくつも顔を持っている生き物なのかもしれないという疑念も拭えず、
ああ、ただ哀しい気持ちになった。
観念して、私は問うた。
「……先週の日曜日、誰とここに来たんですか」
「………!」
彼は、はっとした。
明らかに、うろたえている。
「……私、あの時偶然、カトレアに来て……
そしたら、信也さんが、綺麗な女の人と、一緒に歩いてたから……」
私のこの態度を、怒られても仕方ないと思った。
でも私だって、理由も無しに、こんなことをしているわけじゃない。
吐き出すように、大声で言った。
「……私のことなんて、もう、どうでもいいのかな、って……」
涙が止まらない。
喉が痛い。
鼻の奥がつんとする。
声が、無様に乱れて揺れて、嗚咽になる。



