空き瓶ロマンス

 


固く閉ざされた扉。
 

うんともすんとも言わないボタン。
 

それは受話器のマークの非常用ボタンも同様で、狭い個室内を見渡すと監視カメラらしきものすら無い。


 
おまけに、暗い。
 

どこにも逃げられない。


電話すら繋がらない。
 

……こんな場所で、どうして会ってしまうんだろう。
 

私は床に座り込んで、溜め息を吐いた。
 

信也さんに、会いたくなかった。


目を合わせたら、それだけで罵倒してしまいそうな気がした。
 

とにかく気持ちが荒んでいた。


実母が死んだ時に負った見えない傷が治らないまま、日常のつまらない事をきっかけに更に腫れて、


彼が私じゃない女の人と二人で歩いているのを見て、傷は膿んだ。