でも、見た事無い画家の名前だったから、この神崎刀祢、という人はあまり有名ではないのかもしれない。
その証拠……と言っては悪いが、遠目に受付の辺りを観察するに、あまり人が入っている様子も無かった。
というか旧本館ですら人が少ない上、第一別館ともなると、ほとんどお客がいない。
同じカトレアとは思えないくらいだ。
買い物を楽しむのもおいしいものを食べるのも、皆新館で、という事らしい。
でも、案外そのくらいの方が、今の私にはありがたかった。
そうでなくても、人ごみは疲れる。
「…………」
映画まで、充分に猶予がある。
私は、一歩踏み出した。
――その瞬間、名前を呼ばれた。



