彼女とか、いないんだろうか……。
いつも不思議なのだが、どうやら本当にいないらしい……。
先日みちるは、私に思わせぶりな態度をとっておいて、後で実は恋人など居ない事が発覚し、更に信也さんにまで迷惑をかけたと白状した。
だけど、今の私達は、他の人にはどう見えているんだろう?
姉弟? 兄妹? 学生カップル?
……やましい感情など無いはずなのに、微かに後ろめたい気持ちがある。
みちるは、優しい。
とにかく、私達は奇妙なほどに、気が合う。
だからもしかしたら、私達がお互いに双子だと知らないまま出会ってしまっていたら、
私達は同腹の姉弟だと知らずに、恋をしていたかもしれない。
実際、そういうニュースを聞いた。
外国の、若いカップルの悲劇……。
(それが、きっと怖いんだ……)
みちるに甘えたい。もっと仲良くしたい。
でも、周囲は私達を姉弟として見ない。
見えない、と言う。
信也さんでさえ……。
それはとても悲しいことで、だけど口に出すのはもっと恐ろしいような気がして、
私はみちるの手を自然に振り払って、歩きだした。
「あっちの腕時計、みてくるよ」
「僕も行く」



