「放せよ。何がしたいんだよ」
「行くなっつってんだよ!」
――ドカッ!
猛烈に腹が立った。
みちるは、はじめて反撃した。
膝で、宗太の鳩尾に蹴りを入れたのだった。
「げほっ……」
宗太は離れたが、それでもまだ彼の手を掴んだままだった。
手を振り切れなかったみちるは、もう片方の手で宗太の喉元に拳を叩きこんだ。
そうして、宗太が激しく咳き込んでいる間に、急いで逃げてきたのだという。
「……鳩尾とか喉とか、急所を狙えば力が弱くても勝てるって、
前に読んだ本に書いてありましたから」
みちるが読んだのは、もしかしたら『痴漢撃退法』関連の本かもしれなかったが、
信也はそれについては黙っていることにした。
「それにしても、やりすぎじゃないのか?」



