空き瓶ロマンス




みちるはびっくりして、尻もちをついたまま、茫然と宗太を見上げた。
 
頬を張った宗太自身も、自分のとった行動に驚いたらしく、すぐに後悔するようにうろたえた。
 

しかし、喋っている途中だった。
 

口の端が切れ、すぐに鉄の味が広がった。

舌も噛んだらしく、ひりひりした。


「……痛い」

「………っ」

「痛い……」

「……みち……っ」
 

宗太が彼を呼び掛けた途端、みちるは立ち上がった。
 
頬を手で押さえたまま、静かに言った。


「……出てく」

「みちる……」


「僕は出ていく。

兄さんの事なんて、もう知らない!」

「待てよ!」
 

咄嗟に、宗太はみちるを押さえ付けた。
 

勢いで、思い切りごちん! と壁に頭をぶつけたみちるは、

くらくらしながらも宗太を睨みつけた。