空き瓶ロマンス




「……僕は、誰にも言わなかった。

母が、この事を僕に言った――その事実さえ、誰にも知られたくなかった。


何かが変わっちゃうのが嫌で、

だけど……だからって僕は、もう今までみたく、適当にやっていくこともできなくて……」
 

漠然とした寂しさを感じながら、みちるは考えた。

自分を追い詰めた。
 

挙句の果てには、自分は生れて来るべきではなかったのかもしれないと、思った。
 

ただ無心になれるのは、図鑑を眺めながら太古の生き物たちに思いを馳せる事だけだった。

それが、唯一の慰めだった。



「……母は倫子と修の名前以外、教えてくれなかった。

『会いに行かれたら困るから』って、どこら辺に住んでるのかさえ、僕は知らなかった。



……だから、てっきり遠い場所にいるんだと思ってたけど……」