空き瓶ロマンス

 


私はお通夜の時、焼香の順番を待ちながら、事情を知らない会葬者がこれに気付いたらちょっと嫌だなと思ったが、そんな予想を上回る事が起こった。
 

祭壇に近付き、見様見真似で焼香を終えて顔を上げた時、「あっ」と聞こえた。
 

親族側の席からこちらを見つめていたのは、学ランを着た友人――


結婚式場『ロージー』のバイト仲間の斉藤君だった。
 



思わず、声を上げそうになって、寸前で思いとどまった。
 

だって……よくある苗字だから、全然気にしていなかった。
 

今の今まで、考えもしなかった。








……まさか母の再婚相手が、彼の父親だったとは、思いもしなかった。
 


そして、もう一人……。