今、兄の笑顔はとても明るい。

例えがおかしいかもしれないけど、瑞々しい柑橘類がぱぁっと弾けたように、あたたかい。
 
こんなふうに、私も笑えたらいいな。

「……父さんがさ、『すまなかった』って、言ってた。

……あれから、ちょっと話し合ったんだ。

父さんも、反省してるみたいだよ。

頭ごなしに反対したこと、さ。

例によってあの性格だから、倫子に直接言いづらいんだとは思うけど……」


「そっか。……そうなんだ」
 
私の知らないところで、二人は一体どんな話をしていたのだろう。

「だから、父さんの事も、許してやってくれな。

……父さんは多分、怖いだけなんだ。


倫子が、どっかに行っちゃうのが」



「あははっ……大袈裟な。私は、どこにも行かないって」

「だろ? でもさ、父親の心境って、そういうものじゃないじゃん、一般的にもさ。

娘が彼氏だの婚約者だの連れてきたって、

しかめっ面して『認めん』ってのが、デフォルトだろ? 

だから、それと同じだよ」