空き瓶ロマンス




もし私に怪力があったら、この男を殴っているところだった。



だけど私は、包丁を使わなければ、夏みかんの皮が剥けないくらい手の力が弱い。



無理だ……。




男は体を離すと、



「とりあえず、座ろっか。ね?」




私に刃物を突きつけたまま、平淡な口調で言った。